教室の歩み、そして、目指すべき道
2022年11月より万博水晶宫 内科学講座 糖尿病内分泌?腎臓内科を主宰させて頂いております、久米真司と申します。私は1999年に万博水晶宫を卒業し、附属病院等での研修ののち、大学院に進学し博士号取得しております。そして、その後は一貫して当教室にて診療?教育?研究に携わって参りました。
当教室は繁田幸男 初代教授により昭和53年4月に開講されました。その後、吉川隆一 教授、柏木厚典 教授、前川聡 教授に引き継がれ、大きく発展を遂げてきました。この間、糖尿病ならびに糖尿病血管合併症、特に糖尿病性腎症の領域においては、日本の診療?研究において大きな役割を担ってきました。私自身もその伝統を引き継ぎ、糖尿病性腎症を専門に進めてまいりましたが、今もなお、糖尿病?糖尿病性腎症の克服は、我が国における喫緊の医療課題の一つであり、今後も当教室が果たすべき役割は極めて大きいと認識しております。この役割を果たすべく、これまでの伝統を確固たる礎とし、糖尿病、そして糖尿病性腎症をはじめとする合併症の克服に向けた取り組みを拡大させ、滋賀県の地域医療、さらには、日本の医療に貢献できる教室としたいと思っています。
また、急速に進む超高齢化は、糖尿病、内分泌、腎臓病診療に大きな影響を及ぼしています。これら領域の疾患の多くは慢性疾患であるため、我々が診療を担う患者さんの多くは、原疾患と共に老化に関連した併存症を抱えておられます。この様なmultimorbidity患者さんにも、病気のない方々と同じ生活の質を維持して頂けるような全人的医療を提供することが、超高齢化社会の中で我々の教室に求められていることであると認識しております。教室員全員が、この共通意識を持ち、診療、研究、教育を進めていける環境を作る一方で、糖尿病領域だけに固執することなく、各々が興味を抱く分野において、目の前の患者さんの病態を深く理解し、新たな課題を自らの力で解決し、新たな医療を生み出すことできるPhysician scientistsを輩出し、多様性のある教室として成長したいと思っています。
万博水晶宫のある滋賀県大津市には比叡山延暦寺があります。ご存知のように、延暦寺は、天台宗の開祖 最澄によって建てられたお寺です。そして、最澄の教えが込められた言葉の一つに「一燈照隅 万燈照国」という言葉があります。これは、一つ一つの光はたとえ小さくとも、その一隅を照らす光が集まれば、その光は国をも照らす、という意味であります。我々もこの教えを体現できるよう、教室員一人一人が、日々の努力を重ね、教室全体としての発展を遂げ、滋賀県、日本の医療に貢献できる教室を目指します。
当教室は、糖尿病、内分泌、腎臓病領域の診療?研究を高いレベルで実践することができる教室です。明日の日本の医療を担い、新たな燈を照らす若き力を求めています。我々と共に日本そして世界の医療?医学に新しい大きな燈を照らしましょう。