研究医養成コース修了式を実施しました
2024年3月8日(金)に「万博水晶宫 研究医養成コース修了式」を挙行し、以下の4名の学生が修了証書を授与されました。
- 医学科 第6学年 山口 侑汰 (生化学?分子生物学講座(分子病態生化学))
- 医学科 第6学年 須賀 弘篤 (社会医学講座(衛生学))
- 医学科 第6学年 菊池 修平 (解剖学講座(生体機能形態学))
- 医学科 第6学年 長 直美 (生理学講座(統合臓器生理学))
【研究医養成コースとは?】
本学は平成23年度から研究医枠での入学定員の増員を申請、平成24年度には文部科学省GP「基礎?臨床を両輪とした医学教育改革によるグローバルな医師養成」のモデル事業へも積極的に応募し、いずれも選定されました。GP期間終了後は、大学独自の取組「研究医養成コース」として「入門研究医コース」?「登録研究医コース」を通じて科学的探究心の涵養を特に重視した教育を行ってきました。
2021年度、研究医養成コースは、学部教育部門研究医養成検討専門委員会の下、【医学?医療の発展のための医学研究の必要性を十分に理解し、批判的思考も身につけながら、学術?研究活動に関与する】ことを目的としてアウトカムを設定し、また、学部在学中に一定の要件を満たすことでアウトカムを達成したことを認定するため、「研究医養成コース」の修了証を交付することとして大幅な教育課程の改訂を行いました。
昨年度に引き続き、4名の学生が本コースにおいて医学に関する学術?研究活動に従事する能力を身につけたことを認められました。
◆研究医養成コースの概要はHPから!
/education-and-support/education/research-doctor-course?
【修了生の声 ?山口 侑汰】
研究医養成コースに登録したきっかけは、留年した時に扇田先生に誘っていただいたことです。幸い時間はあったので、研究医養成コースに入り、基礎から応用まで幅広い医学知識を学び、研究の手法や技術を習得したいと考えました。
研究医養成コースでは、日々の研究室での活動が中心でした。基本的な器具の操作から教えていただき、様々な実験に関わらせていただきました。また、様々なセミナーや学会に参加することで、先端技術や最新の研究動向にも触れることができました。そして、研究成果を発表する機会も得られました。ポスターでの発表と、口頭での発表両方経験させていただきました。スライドやポスターを指導していただきながら作成することを通じて、携わっている研究内容の整理や、聴衆者に伝わりやすい発表の仕方などを身に着けることができました。どちらも非常に緊張しましたが、とてもいい経験になったと思います。
最後に、研究に興味を持っている後輩たちへのメッセージとして、少しでも興味があるなら研究医養成コースのセミナー等に一度参加してみると良いと思います。研究医養成コースの雰囲気をつかみ、また、教員や研究医養成コース参加者と会話する機会を得ることができます。
【修了生の声 ②須賀 弘篤】
研究医養成コースの主な研究活動は、調査研究のデータをエクセルやSPSSで分析するというものでした。学会発表や論文やレポートを執筆する機会も与えていただきました。実際に手を動かして解析することでデータの前処理の重要性が分かります。また、自分で論文を書くことで実践的な知識(例えば適切なイントロダクションの書き方、投稿までの手続き)を先生方から学ぶことができました。
後輩の皆さんへのメッセージは二つあります。第一に、統計は大事です。ポリクリと臨床で何百本の医学論文を読む必要が出てきますが、統計手法を理解することで自信をもって解釈できます。国試も出題基準が改訂され、実際に比例ハザードモデルなどが出題されていることから、統計の理解は国試対策としても重要です。統計検定を受けてみるのもいいかもしれません。
第二に、読書も大事です。社会人になると一人で読書する時間は少ないと思います。大学図書館と隣の県立図書館には様々な本が置いてあるので、活用することをおすすめします。大学図書館にあるものの中で、1)疫学統計について『アドバンスト分析疫学』(やロスマン疫学)、2)社会医学についてイチロー?カワチ先生らの『社会疫学』、小塩先生の『日本人の健康を社会科学で考える』、3)社会保障について権丈善一先生の『ちょっと気になる社会保障』や有斐閣ストゥディアの『政治経済学』、ガーランド『福祉国家』が良い本だと思います(ただし、『アドバンスト分析疫学』や『社会疫学』は低学年だと難しいかもしれません)。特に権丈善一先生の本はおすすめです。
【修了生の声 ?菊池 修平】
編入学後に研究医コースの説明と懇親会が開かれました。その際に教授から「胎生期低栄養と脳のリン脂質構成」の研究内容についてうかがい、とても独創的で興味深いと感じました。私自身研究経験はありましたが、学部試験もハードであると聞いていたので、研究するのは色々と厳しい部分があるのかなと思っていました。ただ、自分の興味ある内容や分野であり、学びを深め力にしたい気持ちも出てきたため、春休みにコンタクトをとらせてもらい、生体機能形態学教室でお世話になることにしました。
研究はなかなか思うようには進まないもどかしい部分も多々ありましたが、研究室の方々のおかげで、解剖学会?SUMSシンポジウムでの口頭発表、研究医養成コースでの論文?研究進捗紹介、研究の論文化など多岐にわたる経験をさせていただきました。また共同研究先に実験手法を教えていただいたり、共同研究先へ研究結果をプレゼンして新規のプロジェクトを進める機会を得たりするなど、貴重な経験もさせていただきました。
何より非常に幸運だったのが、周りの人に恵まれた生活を送ることができたことだと思います。夜遅くなってしまうような実験や発表の添削?練習に付き合ってくださった本研究室の先生方や同期らには、本当に温かく支えていただいたと思っています。
学生という身分は、宙ぶらりんな面がある一方で、例えば興味ある分野に関してプロフェッショナルな先生方に、自由にアプローチすることができるのは、学生の特権だと思います。万博水晶宫は多様な人材を受け入れている大学だと思いますし、様々な世代が一緒に仕事をする社会に出ても、ここで得たものはきっとプラスに働くと思います。一方で、大学は自分から行動を起こさないと、なかなか世界が広がりにくい部分もあるのかもしれません。
期待通りでもそうでなくても、成功してもある意味の失敗をしても、そこから得たものを大事にして、有意義で幸せな大学生活になることを願っております。
【修了生の声 ④長 直美】
3年後期から当講座に所属し、最初の1年弱は分子生物学実験の基本を学び、その後、卒業までの3年近くは、マウスを使った動物実験を行いました。後者は、自分で実験計画を立て、試行錯誤を繰り返しつつ、この原稿を執筆中の6年3月、やっと論文執筆にとりかかった次第です。本研究では2回、学会でのポスター発表の機会を頂きました。
成体実験に使われる動物は、必要な段階でその生命を強制的に奪われます。私は生体実験を通して、多くのヒト以外の動物の犠牲のもと、どれほどヒトが安心安全な薬剤や医療の恩恵を受けているかということを学びました。また、自分の技術の未熟さにより、まだ死ななくていいマウスの、その眼から光が失われていった日のことを2年以上経った今でも鮮明に覚えています。
また、成体実験は特に、途中でやめることができないため、学業との並行が大変なときもありますが、大学の試験対策になるようなことはほとんどありません。それでも、失敗の連続の末に実験が成功したときは、何事にも代えがたい喜びを味わうことができました。何より、そのように導いて下さった、出会えてよかったと思える先生にご指導頂けたこと、多くを語りあった研究仲間のおかげで、研究室での日々は、私にとってかけがえのない時間となりました。
研究室に入るメリットは、人それぞれだと思いますが、研究以外で例を挙げると、実習学年でホーム教室がなくなっても自分の席が確保できること、研究室によっては英語を話さざるを得ないので、いやでも無料で上達すること、自分の専門(医学)意外を専門とする人々との交流を通して自分の視野が広がることなどでしょうか。
一方で私は、大学の実習や研究室でも、あまりにも基本的過ぎて誰もしないような失敗をして、先生方から「想定外」と何度も言われました。そんな不器用な私でも、誠実に続けていく気持ちさえあれば何とかなりました。後輩の皆さんは、興味があってもなくても、是非一度、どこかの研究室を覗いてみてください。人に限らず素敵な出会いが待っているかもしれません。