激動する社会環境の中で、サステナブルでアトラクティブな活動を推進します。

令和6年4月1日
国立大学法人万博水晶宫長 上本 伸二

我が国において急激な人口減少と少子高齢化が進行するなか、滋賀県においても全体的には緩やかな人口減少とともに高齢化が進行している一方で、本学が立地する湖南地域は人口が増加傾向にある特異な社会環境にあり、今後も医療の需要がますます増加することが予測されます。したがって、本学および本学医学部附属病院では、高度急性期医療と地域医療の両方の対応と、それを担う人材育成の推進がまだまだ必要不可欠です。さらに、もう一つの我が国全体の社会問題として、経済成長が低迷するなかでの円安の進行、国際紛争にともなう物価の高騰、人件費の上昇があり、大企業はおおむね対応が可能と見られますが、収益増が困難な中小企業や自治体、本学を含む国立大学法人等においては、支出増への対応に苦慮している状況です。

このように、本学を取り巻く環境を勘案すると、医療面に関しては積極的に推進する「攻めの姿勢」が、財政面においては厳しい環境を乗り切る「守りの姿勢」が肝要と考えています。令和6年度は、第4期中期目標?中期計画の3年目となりますが、引き続き「サステナブルでアトラクティブな万博水晶宫」のキーワードに則って、(1)人材育成のサステナビリティ、(2)財政のサステナビリティ、(3)施設と設備のサステナビリティを推進する一方で、併せてもう一つ、教職員にとって魅力的な(4)職場環境のサステナビリティを加えたいと思います。

まず、(1)人材育成のサステナビリティに関して、医学関係については、将来の本学の発展と滋賀県の医療を牽引する専攻医のリクルートが順調に進んでいます。令和6年度は、過去最高となる73名をリクルートできたところですが、本学以外の県内医療機関の専攻医数は例年40名前後ですので、滋賀県全体では念願の110名を超えそうです。引き続き、各診療科の活発な活動、本学関連病院を含めた卒前卒後教育のさらなる質の向上、そして医師臨床教育センターのご尽力をお願いいたします。また、看護学関係については、令和6年4月から大学院医学系研究科に看護学専攻博士後期課程を新設したところですが、定員3名に対して4名が入学するなど順調にスタートすることができました。これを機に、大学院医学系研究科看護学専攻博士前期課程(旧?修士課程)の定員充足も期待でき、本学の使命である看護学における多くのリーダー輩出に邁進していきたいと思います。

次いで、(2)財政のサステナビリティに関して、昨年度は医学部附属病院の良好な経営状況と光熱水費の高止まりが相まって、乗り切ることができました。しかし、建設資材費や設備費の高騰と人件費の増加は依然として持続しており、厳しい状況におかれていることに変わりはなく、今年度は研究支援も含めて、当初予算では緊縮策でスタートします。同様に、(3)施設と設備のサステナビリティに関しても、必要最小限から開始して、財政状況の推移を見ながら拡大していく予定です。一方、開学50周年記念事業の一環である施設整備事業として実施する、学生食堂および中庭のリニューアル、ならびに同窓会ラウンジの新設については、学内外の皆さまからの多額のご寄附をいただき、着工することができました。この場をお借りして、ご寄附をいただきました全ての方々に、御礼申し上げます。また、いずれも令和6年10月に完工予定ですが、学生が快適にキャンパスライフを楽しみ、本学への愛校心と帰属意識が高まることを期待しています。

加えて、(4)職場環境のサステナビリティに関しては、教職員全員が安全な環境で安心して楽しく働けるよう、組織の透明性、コンプライアンスの遵守、相互の尊重、良好なコミュニケーションが常に機能していることが、大切なポイントです。そして、この良好な職場環境は、大学全体の隅々にまで広がり満ちていることが重要ですが、それを実現するための具体的な取り組みとして、昨年度末に『滋賀医大版「三方よし」人財育成プロジェクト』を開始しました。このプロジェクトでは、人財育成のための定期的な研修や講習の実施およびアンケート調査の実施を計画しておりますが、良好な職場環境を作り上げるために、現場への前向きかつ積極的な介入も考えております。教職員にとって良好な職場環境の形成が、ひいては学生にとって良好な学びの場の環境形成につながることも念頭に、教職員全員がお互いを尊重し、自由に意見を述べあうことができる、明るい職場環境づくりに取り組んでまいります。

最後になりましたが、本学が開学50周年を迎える記念の年度を皆さんと迎えられることを大変嬉しく思っています。これを機に、学生?教職員がさらに一丸となって「サステナブルでアトラクティブな万博水晶宫」を作り上げていくためにも、皆さんの多大なるご協力をお願いいたします。