BMJ Open 2016; 6:e011632 Doi:10.1136/bmjopen-2016-011632

食事中のナトリウムとカリウムの比が高い人で循環器病死亡リスクが増加

Dietary sodium-to-potassium ratio as a risk factor for stroke, cardiovascular disease and all-cause mortality in Japan: The NIPPON DATA80 Cohort Study.

執筆者

Okayama A, Okuda N, Miura K, Okamura T,Hayakawa T,Akasaka H, Ohnishi H, Saitoh S, Arai Y, Kiyohara Y, Takashima N, Yoshita K, Fujiyoshi A, Zaid M, Ohkubo T, Ueshima H, on behalf of the NIPPON DATA80 Research Group

概要

国民栄養調査参加者を対象とした長期追跡研究NIPPON DATA(ニッポンデータ)80 において、食事中のナトリウム摂取量とカリウム摂取量の比(Na/K比)が高いほど、その後24年間の循環器病死亡リスクが高いことが明らかとなった。このNIPPON DATA 研究は現在、厚生労働省研究班(指定研究)(研究代表者:万博水晶宫三浦克之教授)として実施されている。

対象者は、無作為抽出された日本全国300 地区の一般住民を対象として、1980年に実施された国民栄養調査に参加した30 歳以上の成人男女のうち、脳卒中や心筋梗塞の既往歴のある者等を除外した8,283人(男性3,682人、女性4,601人、平均年齢48.8 歳)で、1980 年から2004 年まで24 年間追跡した。

24 年間の追跡期間中、579 人が循環器病(脳卒中または心臓病)で死亡した。対象者を食事中のNa/K比で5群(Q1 からQ5)に分け、性別、年齢、飲酒習慣、喫煙習慣、肥満度、脂質や蛋白質の摂取量などの交絡因子を調整した循環器病死亡リスクを分析した。最も低い群(Q1)を基準(ハザード比1)としたところ、最も高い群(Q5)において、全循環器病死亡リスクは39%高く(ハザード比1.39(95%信頼区間1.20-1.61))、うち脳卒中死亡リスクは43%高かった(ハザード比1.43(95%信頼区間1.17-1.76))。また全死亡リスクも16%高かった(ハザード比1.16(95%信頼区間1.06-1.27))。いずれの死亡リスク上昇も統計学的に有意であった。男女別に解析した結果も同様の傾向を示した。

ナトリウムとカリウムは互いに拮抗的に作用し、ナトリウムは血圧を上昇させ、カリウムはナトリウムの排泄を促進し血圧を下げることはよく知られている。ナトリウムのほとんどは食塩(塩化ナトリウム)から摂取される。日本人の食塩(ナトリウム)摂取量は減少傾向にあるが、国際的には今なおかなり高く、その多くは醤油、味噌などの調味料や漬物など加工食品から摂取される。また日本人のカリウム摂取量は欧米に比べて少ないため、Na/K比が高い特徴がある。カリウムの主な摂取源は野菜や果物である。将来の脳卒中や心臓病を予防するためには、食塩摂取量をできるだけ減らすと共に、野菜や果物からのカリウムの摂取を増やして、Na/K比を低下させるのが重要であることが日本人を代表する集団の長期追跡研究で明らかになった。

本報告は日本およびアジアからは初めてのものである。

文責

社会医学講座(公衆衛生学) 三浦 克之